【感想(ウシジマくん)】漂白される社会 開沼博

【感想】漂白される社会 開沼博 - 鳥木ケンのブログ 〜金融系が多め

【感想(続き)】漂白される社会 開沼博 - 鳥木ケンのブログ 〜金融系が多め

【感想(続き2)】漂白される社会 開沼博 - 鳥木ケンのブログ 〜金融系が多め

(前回分)

 本書の中で、面白かった箇所を引用したい。タイトルの通り、漫画ウシジマくん(闇金融漫画)に登場してきそうな人物の話しだ。

 彼は風俗嬢を斡旋するスカウトであり、どのように女の子(商品)を管理し、騙し、より多くの売り上げをかすめるかについて語っている。

 その方法が、洗脳というか、何と称するべきか判断がつかない。以下に引用するので、いろいろと感じ取ってほしい。

もっと(スカウトの)売上を積み上げることもできる。「直引(じかび)き」とか「裏引(うらび)き」って言うんですけどね。女のコの給料をミスカウトが店から貰っって管理する。だから、「その日働いて二万円貰いました、バック(スカウトへのキックバック)が三〇〇〇円でした」となったら、二万三〇〇〇円をスカウトが貰って、そのなかから女のコに五〇〇〇円とか一万円とかを渡して、残りは貰うと。っていうかね、渡さないこともあります。家を借りてあげて、食事も用意して、仕事場への送り迎えもして、いろいろ買ってあげる。「あとは必要な時に教えて。俺も小遣い使うし、残ったら貯金しておくから」って言って。それだけしたら結構かかりますけどね、残りは全部こっちで引く。いや、「私これだけ稼いでいるのに、何でこれしか貰えないの?」って言われることもあります。その時は話術ですよ。「将来のためだぞ」って。

 まるで子供のお財布を管理する親のような振る舞いだ。

 ただ、スカウトは正規に認められた業務ではないので、いつ警察の摘発されるか、反社会的勢力に目をつけられるかわかったものではない。女のコも愚かではないので、スカウトのかすめ取りにきづかれるリスクもある。

 それをどのように対処するか?次の箇所を目に通してほしい。

「一番は女のコに逆恨みされて、「(警察に内情を)語られちゃう」パターンですよね。あと危ないのは集金の時。いつも出入りしているところ見られていて、それを証拠に「やってるだろう!」と。だから、俺は「直引き」する時でも、女のコが直接貰いに行くように仕向けてます。
ちゃんとストーリーを作って、完全に女のコをコントロールできるようにすれば、たとえ女のコ自身がいくら貰っているか知ってても、「何で私はこれしかもらえないの?」とすら言わなくなる。

 このストーリーの作り方が、そのスカウトの腕の見せ所であるのだろう。

 そしてそこから如何(いか)にして女のコ(商品)を管理していくか?

不思議なもんでね、一週間店に定着させられれば一カ月定着し、一カ月定着すれば三カ月は定着して、三カ月定着できれば一年、二年と定着する。段階があるんですよね。段階が上がっていくにしたがってコントロールしやすくなる」

 気がついたら、生活基盤そのものが両者の相互依存のなかで再生産されるようになる。「将来への夢」や「色恋」から始まった自発的な「依存構造」が続く。

 最後に、女のコはこのスカウトから離れ、別の社会システムに組み込まれていく。

漂白される社会

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社会が漂白され尽くす前に: 開沼博対談集

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