【書評(続き)】決断=実行 落合博満

https://trikiken.hatenablog.com/entry/2019/07/10/094102

 前回、「最終決定権を誰が持つべきだ」の章について、面白かった旨を書いたが、具体的にどのような話であったかを記載してなかったので、今回はそこの部分の引用から書評を続けてみたい。

 この章の始まりでは、次の文言が読者の耳目を引いたであろう。

8年間チームを率いて反省すべき点がいくつかあった。一番大きなものは、あらゆる面での最終決定権を監督以外に持たせてはならないということだ。

 「あの落合が、ドラゴンズの監督として、あれだけの立派な成績を残しながら、それでも反省すべき点があったのか?」と、そんな感じで心を踊らせた読者が多かったことだろう。どんなシクジリから、彼は最終決定権を自分のところに集約させるとの結論に至ったのか?そんな読者の心をひいて離さない落合氏が、ドラゴンズ内でどのようなことがあったのかを、今ここで暴露するのか?色々な遊び心を持って、読み進められそうな予感を感じさせる。

命令系統を明確にするため、投手と野手でチーフコーチを置いた。たが、そうやって新たな肩書を加えると、私の思惑とは別の認識を持つ人が出てくる。旅私自身はまとめ役のつもりで「チーフ」を使ったが、チーフは一般のコーチよりも上の立場であるととらえ、そこに上下関係を築こうとしたり、私の知らないところで違う命令系統ができたりする。

 「やっぱりどこにでもいるんだな、アイツみたいな奴は(笑)?!」と多くの読者が笑ったことだろう。まず、自分の所属する、所属した組織にいたアイツを思い浮かべ、次にドラゴンズ内のどのコーチを指していたのか、その犯人探しに心躍らせてくれるそんな一コマ。ホント、読者の心をもてあそぶ。

中日であったことではないと念を押して例を挙げれば、あるチーフ打撃コーチが選手にこう言う。「俺は打撃コーチの責任者だ。誰を使うか監督に進言できるのは俺だけなのだから、言うことをよく聞けよ」

 俗に言う、友達から聞いた話だけどから展開される、生暖かい、朗(ほが)らかな暴露なのか?それとも別のチームの事情を揶揄(やゆ)した皮肉なのか?いずれにしろ、どの組織(大きい会社に限らず、学級会レベル)でもよく起こるあるあるネタ、そして現在進行形でこのようなシロアリに悩まされる管理職がぜひとも知りたいであろう、その対処法はと。

 しかしながら、この後の説明では、「ドラゴンズではトレーニングコーチに恵まれた」と逃げを打ち、この章の説明は収束していく。本当に、何の説明もないののだ。私は間違えて読み落としたのかと、何度も読み返したか、ついぞ具体的に説明している箇所は読み取れなかった。残念ながら。。。

 もう一つ、新入社員を抱えているインストラクター、トレーナー的な仕事をやらされている中間管理職むけの、落合氏の言葉を引用したい。

若い選手にとってもチームにとっても、大切なのはいかに基本的な練習に根気強く取り組むかといこと。まだ基本をコツコツと積み上げていかなければいけない時期に、「同じことをしていたらダメだ」と目新しいものに飛びつく必要はない。しっかりと土台になる力をつけ、ある程度のチカラを発揮できるようになったら、それをできるだけ長く続ける方法を探していけばいい。やられる前に手を打つな。やられる前に手を打つから、反対にやられてしまうのである。

 地味に地味に地味に、腰を据えて進めるしかないってこと。

 

決断=実行

決断=実行

 
采配

采配