【感想】ユダヤの商法(新装版)   藤田田

 日本においてマクドナルドのフランチャイズ展開を初めて行った藤田田(ふじたでん)。本書、「ユダヤの商法」の著者でもある。

 名前がユニークであるが、これは彼の母親がクリスチャンであり、田圃(たんぼ)の田にある十の漢字に十字架のイメージを見出し、名前が田(でん)となったとの逸話がある(洗礼名ではないらしい)。

 私が持つ藤田時代のマクドナルドのイメージは、90年後半のデフレの口火を切った価格戦略である。今でこそ、モスバーガーなりと価格面で大きな違いはないように感じるが、当時の外食チェーンでは、圧倒的に強かった。その当時のやり手の社長が、この藤田田氏だった。

 本書は初版が1972年の書籍であり、私が読んだのは復刻版であるが、その中身は現代でも色あせてないことに驚かされる。

 何よりも「ユダヤの〇〇」と称する書籍には、ロスチャイルド家のような有名どころを除いて、まず有名人以外の、"一般の"ユダヤ人やその固有名詞は登場しない。本書は珍しいことに、多くの商魂たくましいユダヤ人が登場し、著者がどのようにそのユダヤの商法なるものを見出したか、ユダヤ人との折衝から学んだことを、具体的に我々に示してくれている。 

 著者が初めてユダヤ人を知ったのは、GHQで通訳のバイトをしている時である。上級将校でもないにもかかわらず、大金を持ち、兵隊仲間から「ジュー」と蔑(さげす)まれていた兵隊に、著者は興味を持ったことから始まる。

 

G・H・Qで私が親しくなった最初のユダヤ人は、ウィルキンソンという軍曹ウィルキンソンも、給料前に破産状態となった同僚へ、高利をとって金を貸していた。貸した金は給料日が来ると容赦なく取り立てた。取り立てがむずかしい時には、配給物資を貸金の担保や利息としてまきあげる。まきあげた配給物資は、さっそく高い値段で転売する。そんな男だから、ウィルキンソンのポケットは、いつもキャッシュの札束で大きくふくらんでいた。(中略)「私は、ウィルキンソンのやり方を、じっと観察した。そして、ユダヤ人が金銭で周囲の人々を支配していく過程を脳裏に刻みこんだのである。私は知らず知らずの間に、ユダヤ商人の下で、見習い期間に入っていたのである

(続く)

ユダヤの商法(新装版)

ユダヤの商法(新装版)