【感想(続き2)】ユダヤの商法(新装版)   藤田田

【感想】ユダヤの商法(新装版) 藤田田 - 鳥木ケンのブログ 〜金融系が多め

【感想(続き)】ユダヤの商法(新装版) 藤田田 - 鳥木ケンのブログ 〜金融系が多め

(前回からの続き)

 本書は40年近く前に出版された書籍である。しかしながら、その内容は現在のビジネスシーンにも応用可能であるどころか、あるべきビジネスパーソンとして先進的な内容が記述されている。

 著者がが接してきたユダヤ商人から学んだユダヤ商法の公理について、現在の我々が学べること、学ぶべき事柄について、本書を引用しながらまとめていきたい。

 

時間も商品

流行は金持ちから

女を活用

【時間も商品】

 ビジネスパーソンには忙しい。ビジネスのツールとして、電話だけでなく、デスクトップPCからスマホ、タプレッド等、便利なツールが増えたにもかかわらず、業務では時間に追われている。理由はいろいろあろうが、一番の問題はくだらない問い合わせでの電話や会議(電話会議でいいのに、なぜかご参集させられる)に時間を奪われることも多勢にあると思う。

 ユダヤ商品の公理として、他人の時間を奪うのは金を取られるのに等しいという。

私の知人に、某有名デパートの有能な若い宣伝部員がいる。彼はかつて市場調査と視察旅行を兼ねてニューヨークへ訪れたことがある。自由時間を有効に過ごそうと考え、ニューヨークの有名なユダヤ系デパートへでかけたのである。ソコの宣伝部の主任に会って帰ろとうと思いついた。(中略)彼は見事に玄関払いを食らわされたのである。この宣伝部員の寸暇を惜しんでの自発的な同業者訪問は、日本であれば称賛されるべきことからである。いきなり面会を申し込むことは、非常識であるにせよ、彼の場合は日本では間違いなく「今どきの若い者にしてはなかなか仕事熱心な感心なヤツ」と、仕事熱心にみなみられることはあっても、非常識であると非難されることはまずない。しかし、「時を盗むな」をモットーとしているユグヤ人には、そんなナニワブンは通用しない。アポイントメントのない相手の不意の訪問には、絶対に応じない。

 では実際にアポイントメントを取ったらどうなるのか?著者は、ユダヤ商人側は五分、一分単位で時間を指定し、それを超えることは許さないという。

そこで商売に欠かせないのが「何月何日の何時から何分間」というアポイントメントである。面会のアポイントメントを申し込んで、面会時間を30分から10分間に短縮された時は、相手の30分を費やすには値しない、せいぜい10分間に見合う程度の用件を持ち込んだのだな、と自戒すべきである。10分間ならまだしも、ユダヤ商人は、平気で面会時間を五分間とか一分間と指定してくる。それほどだから、約束の時間に遅れることはもちろん、約束の時間がオーバーすることも許されない。相手のオフィスに入ったら、あいさつはひとことだけにして、ただちに商談へ入るのがエチケットである。

 日本人は時間を守らないとよく言われる。この発言を耳にすると、そんなことはないと否定する人が多い。例えば、電車の時間は定刻通りだし、約束の時間を守っていると。

 しかしながら、日本人は約束の時間を全然守らない。それは小学校での生活からにして、日常的に時間の約束を破ることが常識的な、むしろ称賛される文化になっている。

 それは何かというと、『終わりの時間』である。例えば、授業でも定刻を過ぎても、ダラダラと授業を進める教師も少なくない。校長の話なんて、終わり時間を守ったことなんか一度もないであろう。また、会議でも、次のミーティングの予定が入っていなければ、そのまま続行するケースがままある(本当にクソ迷惑)。

 この終わりの時間を、ビジネスの場でも、しっかりと意識していきたい。

 

【流行は金持ちから】

 文化は金持ちが創るというが、古今東西パトロンに支援された芸術家の名や作品は、歴史の授業で習う機会が多々ある。むしろ、パトロンに支援された芸術だけが、歴史の審判を経た生き残るものだと思う。

 商売の場でも、金持ちから流行を生むの利益につながるのだそうだ。

ある商品を流行させるには、コツがある。流行には、金持ちの間ではやり出すものと、大衆の中から起こってくる流行の二つがある。この二つの流行をくらべてみると、金持ちの間から起こってくる流行の方が、圧倒的に息が長い。フラフープとかダッコちゃん、あるいはアメリカン・クラッカーのように、大衆の間から爆発的に起こってくる流行は、すぐに消えてしまう。金持ちの間で流行したものが、大衆のところまで流れてくるのに、だいたい二年ほどかかる。ということは、金持ちの間に、あるアクセサリーを流行きすれば、二年間はその商出できると言うことになる。金持ちの間に流行させる商品は、なんといっても高級舶来品が一番である。日本人が舶来品に弱いことは、通訳時代の経験から、いやというほど知っている。金持ちになればな
るほど、舶来品コンプレックスは根強い。

 最後の一文は、ZOZO社の創業者であった前澤友作さんを思い出してしまったが、それは失礼だった(かな?)。

 確かに、金持ちから生み出された流行は、時間的に劣後して一般大衆にも浸透するのは間違いない。実際に、その流行の波に乗ったことがないから判からないが、その償却期間は2年ほど続くというのが、藤田氏の皮膚感覚らしい。

 

【女を活用】

 女性活躍と称した謎な掛け声が、経済、政治の世界から聞こえてくる。実際には掛け声倒れで終わってるけども。

 実際のビジネスの場では、あなたの会社でも営業成績の上位者には女が多い(でしよ?)。営業パーソンの分母とその女性が占める割合を考えれば、男よりは2倍近く優秀な人が多い感じがする(皆さんの会社でも、そんな感じでしょ?)。経済の分野でのオトコ社会がオンナを排除してるのは、単に嫉妬からではないのかなと、個人的には疑っている。だからか、外資系では日本のオトコ経済界から排除された、優秀な女性が多く採用されている。能力がないオトコに優しい社会ではある、日本は。

 さて、藤田氏が本書を発行されたのは、繰り返し繰り返しになるが今から40年ほど前のこと。彼はオンナを、ビジネスの場で活躍する、優秀な人材として取り扱っていた。では、何が具体的にそんなに優秀だと考えるのか、その考えを以下に引用する。

私の会社の従業員の半数は女子社員である。女子社員だからといって、お茶汲みばかりさせているわけではない。男子社員同様、海外へ商品の買付けに出張させる。古株はもうろん、新人早々の女子社員だって、海外出張させることがある。女というヤツはだいたい、外国に弱いから、海外出張だ、というと、目茶苦茶に喜んで、スッ飛んで行く。ムコウのユダヤ人も、日本の女性だというと、喜んで親切にしてくれる。「テキが鼻の下をのばしたところで値切って買ってこい」私はそう言いつけて送り出す。

 何度も繰り返すが、本書は40年以上前に出版されたものであり(聞き飽きた?)、彼は当時から、現在の女性活躍の掛け声とは比較にならないくらい、女性をビジネスの場で活用していた。

 何よりも、なぜにオトコよりも女の方が優秀であるかは、次のとおりに説明されている。

それに、女のバイヤーというのは、男に比べ、利点が多い。まず、酒を飲まない。中には例外もあるが、酒と聞いて眉が八の字になるような女は、絶対といっていいほどいないから、酒の上での失敗ということがない。次に、男を買わない。男というものは、海外に出ると、商品の買付けより先に、女を買いたがるから、どうしても仕事が雑になる。女は海外に出たからといって、男に目の色が変わるということは、まずない。第三に、女は仕事に忠実だ。海外旅行をさせてくれたボスには、とくに忠実だから、裏切ることは決してない。
ユダヤ商法では、女は最大の顧客であるが、同時に、最大のパートナーでもある。最大限に活用すべきである。

 ユダヤの商法を復刻させてくれた編集者に敬意を覚える。衰退している日本の中で、必死にもがこうとしているビジネスパーソンにとっても必読な書籍だと思う。

ユダヤの商法(新装版)

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勝てば官軍(新装版)

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