【感想】人たらしの流儀  佐藤優

 対ロシア外交で情報収集・分析のエキスパートにして、橋本、小渕、森政権時代に日露平和条約締結までの道筋をつけながら、小泉政権時に、鈴木宗男代議士とともに、国策捜査の犠牲者となった異能な元外交官、外務省のラスプーチン佐藤優

 佐藤優氏は、対ロシア外交で権謀術数の応酬をやり合い、国内では国策捜査で逮捕され、勝てることのない裁判を、何千万の費用をかけ、最後まで戦い抜いたことでも知られている。

 今回は、佐藤氏がビジネスパーソンに向けて書いた、人たらしについて、ビジネスの場面でも応用が効きそうな箇所を抜き出してまとめたい。

 引用箇所が多岐にわたるので、五月雨式(さみだれしき)に抽出していきたい。

 

【嘘をつかずに嘘をつく「象さんの法則」】

 この「象さんの法則」は、会話の中で、こちらから提供する情報から、相手が内容を推測し、最終的には誤認させる方法についてである。会話例は次の内容となる。

 「ここは熱帯です。大きな動物がいます。足はこんなに大きくて、皮膚はザラザラしている。ちょっと毛も生えていて細い尻尾がついています。さて、この動物は何でしょう?」と質問し、相手が象と答えれば、動物のサイを答えとする。

 そして、「鼻について質問しなかったお前が悪い」と相手をなじれる。仮に、相手がサイと答えた場合、正解を象とする。「ツノについて質問しなかったお前が悪い」と。

 この「象さんの法則」を、ただのクイズにするのではなく、ビジネスの場で応用する方法として、佐藤氏は別の著書で、次のことを述べている。

 自分からは明確な解答を示さず、ヒントだけを相手に提示し、自分が思い描く解答と、相手が示してきた回答が一致させるように誘導する。相手は自身の思考の末に獲得した知識を大事にする傾向があり、佐藤氏側の見解のスポークスマンとして、相手を利用することができるということ。

 

【人脈の作り方】

 相手に対し、「教えて下さい」という心構えが肝要である。相手が真面目な人間であればあるほど、自分が考えていることを他人に聞いてもらいたい願望は強い警告がある。その心理を利用すること。その際、自分側から相手に渡すカードが無い場合、とにかく首尾鉄塔、聞き上手に徹すること。当該人脈とは、こまめに連絡を入れ、直接合うときにはランチからスタートし、食事に行った際、仕事の話決してしないこと。多くの人が怠りがちであるが、キーパーソンをつなぐ仲介の労を取ってくれた人がいた場合、行事などに誘うなどして、しっかりと感謝すること。

 いくつかの注意事項があるので、それについても下に記しておく。

 

  • 食事の後、現金で先に支払いをすませておくこと。伝票だと組織があることを、相手に匂わせてしまうため。
  • キーパーソンが女性の場合、二人きりで合うことはせず、他者も含め応接、あくまでもビジネスであることを匂わせること。
  • お酒の席などで、相手が重要な情報を漏らした時、絶対に聞き直してはいけない
    なぜなら、酒が入って滑って出た話を、素面のときに聞き直した場合、今後、相手から警戒されるため。
  • 会話をつなげる簡単な方法はオウム返し(例として、カラマーゾフの兄弟に出る異端審問が参考になる)。良い質問は、相手のことを知ってないと出来ないので、難易度が高いと心得ること。
  • 情報源、人脈を切る場合、相手に「貸し」がある状態で遠ざけることが、その後のトラブル防止に役立つ。

(続く)

人たらしの流儀 (PHP文庫)

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