【感想(続き2)】一生、同じ会社で働きますか? 山崎元

 

https://trikiken.hatenablog.com/entry/2019/09/10/102055

(前回からの続き)

 

 前回、山崎元氏が自信の経験から、転職エージェントとの付き合うにあたっての注意事項について紹介した。

 最後に、転職でのリスクや心持ちについて気になる箇所があったので引用していきたい。

 本書の感想で、一番初めに引用したのは、転職は自分という労働サービスを取り扱う、主たる取引先の変更である旨であった。

 これと同程度に思うところがあったわけではないが、台風が通過した翌日、出社しようと多くのサラリーパーソンが駅に長い行列を作ったニュースが流れていた。この中には、何も考えず、ただただ強引に出社しようとしていた人が相当数いたとは思う。出社の必要性が乏しい中、敢えて出社しようとした方は、特に念頭に置いて欲しい言葉がある。

 

 個人と会社は対等な関係であり、個人の自由は会社の都合に優先するということだ。

 

 そんなこと出来ないよと思うなかれ。転職すること(取引先を変更すること)で、上記の事項を履行できることにつながり、個人の選択肢を増やすことにもつながる。負担もあろうが、台風の中、命を賭けて出社するよりも負担は小さい。

 転職の基本は、当たり前ではあるが、収入を途絶えさせないよう、次の異動先が見つけてから行うこと。もう一つ大事なのが、不採用のリスクが完全に消えた状態にすること。これについては、以下のように述べられている。

「口頭で、大丈夫」とか「握手を交わした」というレベルではなく、不採用のリスクが完全に消えたことを確認するのが基本だ。「慎重に過ぎると思われるだろうか?でも、これくらいでいいのだ。採用する側の事情を言うと、求めているポストにもっとふさわしいと思われる候補者が急に現れるかもしれないし、あるいは思いもよらない社内の有力者から採用に反対する横槍が入ることがある。こうした場合に、「何とかならないか」と思うことはあるものなのだ。また、外資系の会社の場合だと、本国の本社の方針で、全世界的に採用活動がストップされることがある(俗に「ヘッドカウント・フリーズ」という)。このような場合は、サインのある書類を持っているか否かが決定的に重要になる。

 転職活動していると、早くこの会社から離れたいという気持ちが強くなり、上記のリスクを完全に払拭した状態でないにもかかわらず、辞表を提出しがちであるから、注意が必要だ。

 他にも転職には色々とリスクがあるかと思われる。例えば、会社を辞めた後に雇ってもらえないリスク、転職活動が露見するリスク等があるが、これらは自身でカバーすることができるので、各々で注意したい。転職での最大のリスクは、想像していた業務と違うということだろう。

転職に際して最大のリスクは何だろうか? それは、次に行う仕事の内容が自分の想像していたものと大きく異なることだと思う。たとえば転職先での仕事の内容や、それが自分のキャリアにどのような効果を持つのかということは、入社してみるまで完全にはわからない。もちろん、新しい仕事と環境に自分がどの程度適応できるか否かについても不確実な点がある。このリスクを完全に消し去ることは難しいのだが、仕事さえキチンとしていて、自分の仕事上のスキルや経験が損なわれていなければ、次の転職先が自分に合わない職場であっても、また転職するというオプションを比較的容易に行使できるから、仕事の内客とキャリアへの影響については十分に気を配って欲しい。

 このリスクとは別に、転職による副作用について、興味深い記述があったので引用したい。

今回、正直に取り上げるのは、転職のもっと本質的なマイナス要素といえる、転職活動の精神的な副作用のことだ。これは、本人が自覚できないことが多いし、自覚しても認めたくないことが多い。およそ、損とかマイナスというものは、これを正しく認めない時に思わぬ悪さをするものであるから、精神的なマイナス要素に気づくことは極めて大切だ。率直に言う。転職しようとすると、とくに転職の実現性が高まるにつれ、今の会社から
気持ちが離れる。これこそが転職活動の最大の副作用ではないかと思う。


 自身の転職や他社の転職前の勤務状況を思い出してほしい。確かに、業務へのコミットはかなり落ちていることが思い出されるであろう。

 これについての解決策等は本書では示されていなかった。やはり、一度途切れたモチベーションを戻すのは難しいようだ。

 最後に、本書で興味深かった内容を二つ引用したい。一つは転職することを、もしくは転職先が決まったことを、同僚に話すケースについてだ。私はリスク的にも大反対ではあるが、山崎氏は別の角度で、反対している。

そして、多分一番いけないのは、相談相手を「試す」ことになってしまう可能性だ。相相談者が転職することは、会社にとって、仕事にとって、何らかの影響があるはずだから、相談された側は、相談者の秘密を守るべきか、会社の立場に立って、相談者が転職しようとしていることを、情報として社内のしかるべき人物に伝えるべきかで迷うことになる。友人を取るか、会社を取るか、といった深刻な選択に他人を直面させることは良いことではない。

 もう一つは、サラリーマンが出世する上で、著者が尊敬する人物から言われた心得についてである。

筆者が若い頃に、サラリーマン道の達人と見定めた大先輩から教えてもらった心得だ。この達人は、その後本当に大出世して、成功した人だ。彼が筆者に語ってくれた口調を再現して説明すると以下のとおりだ。「いいか、ヤマザキ、仕事の意見は大きな声で言え。意見を言わない奴は、居ないのと同じだ。どうせ言うなら大きな声で言え。そこで肝心なことがある。誰にでも同じことを言う、ということだ。相手によって言うことを変えてはいけない。これは難しいと思うかもしれないが、絶対に正しいから覚えておけ。そして、万一、意見が間違っていたとしても、会社のためにという立場から真剣に言った意見なら、きっと助かるから、心配するな。これだけできたら、たいしたものだが、あと一つ、『あいつは、ちょっと可愛いところがあるな」と思われるような何かがあれば、鬼に金棒」

 組織では、人によって態度、言動をコロコロ変える輩は多い。しかし、誰にでも同じことを、大きな声で主張していくことが肝要だ。

一生、同じ会社で働きますか?

一生、同じ会社で働きますか?