【感想(しつけ)】子どもの脳を伸ばす「しつけ」 ダニエル・J・シーゲル

 子供が癇癪(かんしゃく)を起こし、怒鳴り散らして応戦する親は多いと思う。しかし、それはいい解決方法ではないと、多くの親はうすうすは感じているかと思う。そんのように、子育てで困ったことを解決するのに、本書は少し役立つかもしれない。

 著者は、医科大教授の夫、児童青年心理療法士である妻、そして現在3人の子供を育てている夫婦であり、個人的な経験と臨床経験、最新の脳の発達に関する科学研究の知見をもとに本書を構成している。

 あなたがふだん行っているであろう、子供へのしつけ(感情を爆発させて怒る等)は、残念ながら良い方法ではない。著者はしつけの基礎は、次の簡潔な言葉にいくつくという。

「つながり」と「切り替え」

 こちらについてはおいおい説明していくとして、まずは本書にリストアップされていたしつけの間違いについて引用したい。20個ほどの間違いリストが掲載されているが、すべてを載せるわけには行かないので、気になった箇所だけ引用となる。

(しゃべりすぎる)

子どもがかんしゃくを起こして耳を傾けられなくなっているとき、親はただ黙っていなければならない。混乱した子どもに向かっていくらしゃべっても、たいていは逆効果だ。さらに気持ちが乱れてしまう。かわりに、ことば以外のコミュニケーションを使おう。抱きしめ、肩を抱き、微笑みかけて、うなずく。子どもが気を落ち着けて耳を傾けられるようになってから、ことばを使って論理的に問題に向き合えば、切り替えられるだろう。

 子供がかんしゃくをおこし、それに応戦している親は本当に多い。最近では、アンガーマネジメントなる怒りをコントロールすることが推奨されているが、どこか通じるところがあるかと思う。感情的に怒鳴り散らす人間の言葉に耳を傾ける人は存在しない。それは子供がかんしゃくを起こしてるからと、大人が同じことをしていいわけではない(でしよ?)。

(子どもの後ろ向きな気持ちを否定)

何かが思いどおりにならなくて、子どもが激しく反応したとき、その反応を止めたことはないだろうか?そうするつもりはなくても、親はよく、子どもが楽しそうにしているときにはそばにいたいが、後ろ向きな感情を見せているときには近づきたくないというメッセージを伝えてしまう。たとえば、「いい子になれそうなら、また家族に戻れるわよ!」などと言ったりする。そうではなく、最悪のふるまいをしているときでも、そばにいると伝えたい。1つのふるまいや気持ちの表現のしかたに「だめ」と言っても、子どもの気持ちには「いいよ」と言おう。

 部分否定からの全体否定、それも子どもの人格に対して。あるあるだと思う。どんな時でも、親としては、子どものそばにいること、味方であることを伝えておきたい。

(子どもの"感情"を軽く見る)

子どもがかんしゃくを起こしたとき、特にそれが的はずれでバカげて見えると、ついこんなことを言いたくなる。「疲れてるだけよ」、「大騒ぎするのはやめろ」、「そんなにたいしたことじゃないでしょう」、「なんでそんなことで泣くんだ?」。しかし、そういうことを言えば、子どものそのときの感情を軽んじることになる。あなたが混乱しているとき、誰かがこのうちのどれかを言ったら と想像してみてほしい。とっさに反応する前に、じっくり耳を傾け、子どものことを心から理解するほうが、ずっと効果的な対応ができる。あなたにはバカげて見えても、子どもにとってはとても現実的なのだということを忘れないでほしい。

 ついつい子どもの人格を低く見てしまうことが多い。自分もおおいに反省するところがある。感情の爆発は、真剣なのだ。決して揶揄してはならないことを戒めたいと思う。

【しつけとは】

 本書で定義されているしつけについて引用する。その前に、しつけとは何かを自分なりに考えてほしい。どこかペットの調教に近いものになっているかと思う。アレはだめ、これはダメと。

しつけの2つの目的は、

①できるだけ早く外面のふるまいをきち んとさせること

②ゆっくり気長に脳の内面の構造を育てて、よいふるまいと人づき合いのスキルを養うこと

 シンプルなことが記述されている。どこの子育て本でも書いてある内容だ。何も目新しい事はない。ただしどうやればいいのか?

 ついつい、子供に対して怖い顔をして、ルールをどなり、思い知らせる方法をやってしまうが、それで子どもから感謝されたことがあるだろうか(あるわけない)?

 アンガーコントロールもかねて、子供のよろしくない振る舞いに対しあなたが怒る前に、次の簡単な3つの質問を自分にしてみよう。あくまでも、自問することである。

[1] なぜ子どもは「こんなこと」をしたのか?

[2]今ここで、何を教えたい?

[3] どうやって教えるのがいちばんいい?

 [2]について補足したい。しつけは子どもに対しての罰を与えること、あなたの気持ちをスッキリさせるために行うものではない。

 さらに[3]についても補足したい。すぐに型にはまった報いを与えないようにしたい。

 例えば、あなたの子どもが宿題をやらずに、やるように言ったら、泣き出して怒ったとする。その時のあなたは、般若(はんにゃ)のような顔をして、「帰ってからすぐにやっていれば、今頃終わってたんだ」と怒鳴り散らすであろう。

 そこで、[1] なぜ子どもは「こんなこと」をしたのか?について考えてみよう。子どもは学校に行ってから疲れている。他に習い事があったり、友達との遊ぶ約束を努めたのかもしれない。寝不足だってありえるだろう。宿題をやらなくて良いわけではない。しかしながら、相手の背景を考えれば、あなたの中の反応も変わるであろう。

 [2]今ここで、何を教えたい?について、考えてみよう。時間の使い方?焦らずに宿題をやること?いろいろと自問してほしい。

 最後に、[3] どうやって教えるのがいちばんいい?かについて。もし仮に、子どもが泣いたりして感情の洪水を流している時は、相手が落ち着くのを待てばいい。そんな時に話しかけても、頭には何も残らない、あなたの般若(はんにゃ)ヅラした顔以外は。このときには、一緒に宿題を手伝ってあげるのがいい。子どもが落ち着いたときには、話しを聞いてあげ、子どもにその解決策を考えさせればいい。まだ、解決策を提示するには至らないと思うが、できるだけ考えさせるように。すぐに結果は出ないが、続けることが大事だ。