【感想(ドンガラ)】数に強くなる 畑村洋太郎 - 鳥木ケンのブログ 〜金融系が多め


【感想(数の作り方)】数に強くなる 畑村洋太郎 - 鳥木ケンのブログ 〜金融系が多め

(前回分)

 畑村洋太郎氏の数を作る方法について、以前、引用させてもらった。大股歩きは身長の半分、電車は一駅2分、7%10年で2倍、日本国勢図会、世界国勢図会の統計データを一人当たりで捉える方法等について、本書のエッセンスを抽出した。

 今回は重さの推定方法について、本書を参考にしたい。本書では、重さを求める際、著者がドンガラと呼称している比重の計算ノウハウを示してくれている。

【ドンガラ】

 まずは著者が定義するドンガラとは何か?以下の説明を読んでほしい。

「ドンガラ」 とは、見かけはドンと構えて立派だが、フタを開けたらガラン胴という意味である

 単純にどんぶり勘定とガラン胴を掛け合わせた造語である。ただ、このドンガラを使いこなせるようになるにはどうすればいいか?

ドンガラをやるときに大事なのは、「長さ」は体積を通じて「重さ」と結び付いているという見方である。「長さは長さ」「重さは重さ」と杓子定規に考えて、互いに何も関係ないように思っている人がいるが、そんなことはない。長さがわかれば、体積がわかる。体積がわかれば、重さがわかるのである。(中略)中身は水が入っているとする。基準になる数は、

 

・1メートル立方の物は1トン

・10センチ立方の物は1キログラム

・1センチ立方の物は1グラム

 

 3つである。この3つの数を基準にして、「ドンガラ率」なる数を掛け合わせれば、どんなものでもパッと見て重さがわかるのである 。

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 この3つの基準となる数値は、小学校のときに習った1ミリリットル、1リットルの関係を思いだしてもらえればいい。上図にもあるので、これを念頭に次を読んでほしい。

この3つの数を基準にして、「ドンガラ率」なる数を掛け合わせれば、どんなものでもパッと見て重さがわかるのである

  • 相当ギッシリ詰まっている物で1/5
  • ふつうにラクに作っている物で1/10
  • 張りボテのスカスカな物で1/30
という数である。

 上記のドンガラ率なるものをどのように利用するか?

 例えば2m☓2m☓4mの小型のワゴンの重さはいくつか?まずは16メートル立法のワゴンの重さを16トンとする(水の入った箱の重さ、1メートル立方の物は1トンを基準にする)。

 そこに比重、ドンガラ率を当てはめる。ここで使うドンガラ率は、1/10(ふつうにラクに作っている物)から1/30(張りボテのスカスカな物)が当てはまりそうな気がする。

 私はその中間である1/15としたが、畑村氏も同じような計算方法であった(下図を参照)。

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 大体、1トンであろうと私は予想した。畑村氏は、内装とかも含め1.5トンと予想をしていた。

 ドンガラ率の補足として、鉄、安山岩玄武岩の比重の解説も本書から引用しておく。

ドンガラ率には「比重」を織り込んでおく必要がある。比重といえば、ぜひ覚えておいてほしいのは、次の3つの数である。

・鉄の比重は7.85

安山岩の比重は2.3(安山岩は日本の山を構成する岩石)

玄武岩の比重は2.7(玄武岩は海洋底を構成する岩石)

である。とくに「785(ななはちご)」という数は、覚えておくと便利である。たとえば、円の面積の公式でも登場する。

すなわち、0.785☓(Dの2乗)である(Dは直径)。

半導体

 半導体はシリコン元素にリンやボロンを含めて作られる。シリコンの原子が100京個の中にリンが一個の不純物として存在する世界である。この原子の世界を、ドンガラ構造を、著者は次のように説明している。 

その究極のドンガラ構造とは、どれだけドンガラなのか。それには「100京」、つ まり10の18乗という数の大きさを実感する必要がある。

 その大きさの実感は、本書の次の図が理解の助けになる。

タテに100万個、ヨコに100万個、奥の方に100万個、シリコンの原子がズラッと並んでいる。今度並んでいる数は、さきほどの100万個、つまり10の6乗である。 ということは、図の立方体の中には、シリコン原子が10の18乗個詰まっているわけである。100京という数は、こういう数のことを言うのである。ならば、この立方体の中に1個だけポツンと ●(黒丸)のリン原子が入ってきたらどう 感なるか。半導体ができるのである

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 ちなみにだが、著者はppm(ピーピーエム)という、大気汚染のニュースでよく言われる単位を引用し、大気汚染の世界観を示してくれている。

ppmとは「百万分の一」という意味で、parts per million の略である。

(中略) では、その分母にある10の6乗とはどんな数か。 ここで図のを見てほしい。タテに100個、ヨコに100個、奥の方に100個、「空気の分子」がズラッと並んでいるとしよう。当たり前だが、100という数は1の後ろにゼロが2個くっついた数である。つまり、10の2乗である。ということは、図の立方体の中には、「空気の分子」が10の6乗個詰まっているわけである。10の6乗(100万)という数は、こういう数のことを言う。ならば、その10の6乗個の中に1個だけポツンと●(黒丸)がまぎれ込んだらどうなるか。1ppmになるのである。●は、排気ガスや煤煙の微粒子である。タテ・ヨコ・奥がせいぜい100個の空気の塊の中に、1個まぎれ込んだぐらいで人間の体に悪さをする。それが大気汚染の世界なのである。

 大気汚染の世界よりも半導体の方がスカスカの世界、ドンガラ構造をしている。今だと、コロナウィルスの世界観をドンガラ構造で計算してみるのも楽しいかもしれない。

数に強くなる (岩波新書)

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