【書評】アメリカ極悪刑務所を生き抜いた日本人 KEI著

 著者のKEI氏は仲間とともにハワイへ薬物を密輸、その仲間は、実は、FBIのおとり捜査の協力者であり、KEI氏は嵌(はめ)められ、逮捕されてしまう。そこから十数年に及ぶ、アメリカでの刑務所を渡り歩く囚人生活が始まり、数奇な運命からメキシコマフィア、チカーノとの交流が始まる。

 逮捕の経緯自体が、ある種、大波乱を予感させる漫画のような展開にみえ、もとい言い方を変えれば作り話のように感じられるかもしれない。しかしながら、この後にも続く刑務所での懲役生活でのKEI氏が体験してきたことを、どのように例えて言葉にすればいいのか例えようがないほど、差別や暴力が待ち受けている。KEI氏が体験してきた、大変さを形容する言葉がないことを、本書を読み進めるとわかってくる。

 私は、KEI氏がいくつかのメディアに登場し、彼自身の体験談を聞く(観る)機会があった。その様子は、どこか淡々と、何気ない日常の一コマについて話すように語る姿に、どこか違和感を抱いていた。例えば、刑務所内で、彼自身が50名ほどの黒人集団からリンチされ、死にかけた体験を語っている時にも。しかしながら、彼の著書をいくつか読み、その違和感は氷解することとなる。理由は至ってシンプル、メディアで話せる内容は゛軽い゛体験談であるから(もう一度書くけども、50名ほど黒人からリンチを受けた体験がである)。

 私が、著書を読み進める中で、実地で体験しなければ分からない事だなと思えたのは、火をつけられた囚人に関するエピソードである。

 もし仮に、洋服に火をつけられた人がいれば、その火を消そうと誰もが助けようとするかもしれない(ドラマなどで、火を消そうと、主人公が自分の服を脱ぎ、それで火を消そうとするシーンが思い浮かぶでしょ?)。

 しかしながら、KEI氏いわく、それはとても危険なことであるとのこと。なぜならば、火をつけられた囚人はなりふり構わず周りの人間に抱きつき、絶対に離れないため、助けようとした人間も一緒に火だるまになってしまう。唯一できることは、火の粉が及ばないところで、放ったらかしにするのが対処法とのこと。

 恐ろしすぎる。。。。。

 

 

KEI チカーノになった日本人 (GUFT 2)

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プリズン・カウンセラー

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アメリカ極悪刑務所を生き抜いた日本人

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