【書評(補足)】アメリカ極悪刑務所を生き抜いた日本人 KEI著

 アメリカの極悪刑務所(毎月、両手では数えられない人数の囚人が殺されるような刑務所)を、何カ所も転々としながら、10年以上も服役したKEI氏。彼の著書を読んで感じたのは、我儘を(わがまま)を貫き通す力が、常人のそれをあまりにも超えていることである。それを強く感じさせたのは、指詰めについての記述である。

 KEI氏が、アメリカで逮捕される前のヤクザをしていた時に、指詰めをしなくてはならない状況についてである。我々がイメージする指詰めは、まな板に包丁ですっぱりと切るイメージを持っているだろう(それ自体が気持ち悪いが)。彼の指詰めは、短時間で済ませるのとは異なり、切れ味の悪いナイフで、グリグリと指の骨を削る方法でである。それも自らで。。。。

 我儘を貫き通す力とともに、彼の著書から感じることは、決断を尊重する姿勢である。その例として、KEI氏と同じ刑務所に収容されていた日本人の銀行員についての記述で、それを感じた。銀行員は、会社の金をつまんだか何かで逮捕され、毎月、数十人も殺し合いが行われる刑務所に収監された。その彼が選んだ行動はただ一つ、監獄から1歩も出ず、ベッドの中でうずくまっていること。それも、2年間近くの刑期中、ずっと、である。私は、この銀行員を少し滑稽(こっけい)に思いながらも、広くない監獄から1歩も出ないこと、それを2年間も続けることを考えたら、頭がおかしくなりそうだが、彼はそれをやり遂げ、出所することとなったらしい。

 そんな銀行員に対するKEI氏の考えは、「これも1つの決断である」ということであった。ここで言及されている゛決断゛の含む意味合いを理解するのは、容易ではないであろう。ただし、感じるものは読者ごとに必ずある。そんな必読書であった。

 

 小咄(こばなし)としてもう一つ、書き加えたい。これは、KEI氏がフィリピンで経験したことについての話。内容を要約すると以下となる。

①ある人物が、現地の警察から贈賄を要求され支払った。

②その後、その警察の長官(上司)へクレームをつけた。

③最終的に、警察署長は贈賄を要求した警察官を殺害した

 これだけを読めば、ある意味、警察署長はまともにも思えてしまうが(決してそんなことはないが、この著書を読んでいると、不思議とまともに感じてしまう)、KEI氏の評価は真逆であった。要約すると、以下になる。

仲間をかばえない人間と付き合うのは危険であること。なぜならば 自分が いつ売られるか分からないから

なるほど。

 

KEI チカーノになった日本人 (GUFT 2)

KEI チカーノになった日本人 (GUFT 2)

 
プリズン・カウンセラー

プリズン・カウンセラー

 
アメリカ極悪刑務所を生き抜いた日本人

アメリカ極悪刑務所を生き抜いた日本人