【書評(続き)】ダークツーリズム 丸山ゴンザレス

【書評】ダークツーリズム 丸山ゴンザレス - 鳥木ケンのブログ 〜金融系が多め

 前回、危険地帯ジャーナリストの丸山ゴンザレス氏の著書での、彼が取材したメキシコ麻薬戦争について書いた。

 今回は、本書で、取材対象者へのアプローチの仕方、接し方、その距離感の保ち方について、気になった箇所をピックアップしてみる。新しい人間関係を作るのが億劫(おっくう)な人も、マフィアやスラム街の住人のようなマージナルな、いろいろとクセの強そうな人物を対象として取材を続ける丸山氏の手法は、大いに役立つものと思う。

 1つは取材対象者へのアプローチについて。仮に、読者がサラリーパーソンであれば、攻略しようとしている営業先(決裁権限者を有するキーパーソン)へのアプローチ方法として、丸山氏のは参考になると思う。

 彼が裏社会のキーパーソンへコンタクする際、強く意識しているのは、そのキーパーソンへ繋いでくれる紹介者の組織でのポジションがいかほどかとのことである。それは、裏社会では紹介者に準じて、取材者の立場も決まってしまい、その後の取材成果も決まってしまうからとのこと。

 これは多くのビジネスシーンでも応用の効くケースだと思う。そんなのは知っていると、出来るビジネスパーソンは思うであろう。では、そのキーパーソンへ繋ぐ人物の探し方はというと、著者へのリスペクトも兼ね、ここでは記載しない。さすがに本書を読むべきであろう。

 もう一つだけ、著書の裏社会、アンダーグラウンドの世界へのアプローチの際、その謝礼をどうするかについて(今度のは、必ず、その具体的な方法、事例を紹介する)。彼のフィリピン銃密造村へ取材したケースについてである。この取材では、密造村へ繋ぐ過程で、10人近くの人物を介し、密造村へと辿り着いている。素人感覚で考えると、ついついあと腐れなども意識して、多めの謝礼(例えば5万円?、10万円?、それ以上?)を相手に手渡したくなるかもしれない。しかしながら、丸山氏のそれは桁が異なり、タバコ1箱を謝礼としているらしい。これは彼が決して吝嗇家(りんしょくか)、ケチであるというわけではなく、現金で支払うとキリがないからとなこと。

 考えてみれば、これで多めの金額を支払ってしまうと、のちのち、たかられる可能性もあるし、現金だと際限がないというのも説得力がある。ただし、丸山氏の中で、仲介者が頑張ってくれたと思える場合、昼食代(1000円?多分、現地の物価を考慮した金額だと思う)が浮くぐらいの謝礼にしているとのこと。 このぐらいの金額でいいのかと、心配してしまいそうになるが、それで彼はここまでの取材成果を多くの読者に示してくれているので、これも1つの手段なのであろう。

 謝礼問題については、人によっては、成果の出た紹介者をしてくれた者へは、豪勢な食事に誘うなど、その労をねぎらうべきとの主張もあり、一般化するケースは難しい。ただ、共通しているのは、現金の過多で謝礼を決めるのは、礼を失しているのは確かもしれない(付き合っている彼女に、セックスの後に三万円渡すのと、三万円相当のバラを贈るのでは、その反応は明らかでしょ?)。最後は、下世話な例えで終わってしまうが。

世界の混沌を歩く ダークツーリスト

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