【感想】人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの   松尾豊

 人工知能機械学習、AI、ディープラーニングとビジネス業界のあらゆる面でこれらの言説が飛び交ってるが、その定義は定まっておらず、素人の言葉遊びが多いように感じる。しかしながら、プロフェッショナルの中でも、こと人工知能については、どうやらその定義は定まっていないらしい(学術的に定義がはっきりしないものは山ほどあるけども)。

公立はこだて未来大学学長の中島秀之氏は、人工知能を「人工的につくられた、知能を持つ実体。あるいはそれをつくろうとすることによって知能自体を研究す。る分野である」と定義している(公立はこだて未来大学は、「国内の人工知能のメッカ」ともいえる場所であり、中島氏も1980年代からの人工知能の研究に多大な貢献を残している)。また、人工知能学会の元会長で京都大学教授の西田豊明氏は、「「知能を持つメカ」ないしは「心を持つメカ」と定義している。(中略)このように、人工知能の定義は専門家の間でも定まっていない

 上記の内容に目を通し、このように思った諸氏もいたと思う。人工知能か否かを判定する「チューリングテスト」(人工知能に模したコンピューターと人間がお互いを確認できない空間で、チャットだけで会話し、人間か否かを判定する古くから存在する謎のコンテスト)は何なのだと。

 しかしながら、「人工知能は人間を超えるか?(ディープラーニングの先にあるもの)」の著者は早い段階、段落にてチューリングテストはあまり意味を為さないと主張している。

 ここまで書いて気づいたが、本書の著者について説明していなかったので、ここに記す。著者は松尾豊氏であり、人工知能、AI、ディープラーニングに関連する学術、学会であれば、その名を知らない人はまずいないほどの有名人である。

 最近では、経済関係のニュースでもその名を目にする機会が増え、企業が開催するセミナーのパネルラーとして登壇することが増えてきているお仁である。

 先に述べてしまうと、松尾氏は日本国内での人工知能に関する学術的、実用的な面でみても、日本は周回遅れであり、アメリカ、中国には太刀打ちできないと述べている。もし、活路を見出すとすれば、これらの大国とは争わない、別のアプローチ(要はニッチな分野)から、技術を進展させるべきと提言してくれる現実主義者でもある。

 次回から、この松尾氏の著書からビジネスで役立ちそうな箇所をいろいろと引用していきたい。

(続く)