【感想】サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 人生100年時代の個人M&A入門 三戸政和

 今の仕事がイヤでイヤでた溜まらないサラリーマン諸氏は多いと思う。金曜の夜、同僚と安い居酒酒で「会社を辞める」、「上司は使えない」、「この会社は駄目だ」とくだを巻くことは多いと思う。翌日、二日酔いによる頭痛とともに目を覚ますことになることも付言しておく。

 さて、本書「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 人生100年時代の個人M&A入門」の著者、三戸政和、彼は日本創生投資ファンドを設立、30億円ほど集め、中小企業の事業再生・事業継承を主な業務として行っている人物である。三戸氏は、事業継承もされず、黒字倒産をする多くの中小企業の事実を目の前にした経験があり、本書でサラリーパーソンへ中小企業の事業を承継することを提唱している。

 先の安酒でくだを巻いていたサラリーマン、彼らが夢見るスター、ホリエモンこと堀江貴文に自分もなれることを、本書は提唱しているようにも思える(でしょ?)。

 しかしながら、本書の早い段階でホリエモン的な起業(ゼロから会社を作ること)は止めるよう釘を刺している。もっと、現実的な企業について、本書を参考にしたい。

 気になった箇所を要約すると以下となる。

 

1.飲食店の経営は素人には厳しい事業であり、ゼロイチ起業は選ばれた者だけしか生き残れない

 

2. 買収候補先企業の探し方

 

3.買収候補先の会社で働く

 以上の三点について、本書を引用しながら書いていきたい。

 

1.飲食店の経営は素人には厳しい事業であり、ゼロイチ起業は選ばれた者だけしか生き残れない

⇒「高級レストランが、なぜ、1000円ランチを提供しているか?」

 この問いを読んだ時、私は不覚にも客寄せと考えてしまったが、それは甘かった。著書曰く、それは食材のロスを減らして、損失を回避するためであり、ランチ自体は大きな利益にはつながらないとのこと(それどころか、ランチを出しても赤字のケースも多々あり)。

 飲食業は素人が一番手を出してはいけないレッドオーシャンな事業であるとのこと。

 

2. 買収候補先企業の探し方

M&Aといえば、真山仁が執筆した小説を思い出す方も多いだろうが、「中小企業の事業承継としてのM&A」が世の中にも認知されている。例えば、以下のような中小企業のM&Aに特化した専門会社も存在する。

  1. 日本M&Aセンター

  2. M&Aキャピタルパートナーズ

  3. ストライク

 また、証券会社のM&A部隊や会計事務所から独立した事業継承会社も存在するので、自分で色々と調べてみるのも楽しい。

 

3.買収候補先の会社で働く

⇒急に「自分がこの会社の社長だ」と大きな顔をして、気持ちのいい人はいないでしょ?従業員との信頼関係の醸成、後から「こんなこと聞いてなかった」なんてことが無いよう、買収先の会社で働いてみるのもいい。これについて、著者は次のように述べている。

現社長とのあいだで、2年後の買収を前提に取締役になるといった契約を交わし、専務取締役として入社します。その際、入社前に、会社の利益水準と連動した買収金額を決めておくことがとても重要です。また、「知らされていなかった重大な瑕疵が発見された場合には、無条件でこの約束を破棄することができる」などと、こちらへの法的拘束力がないことを書き入れておくことも重要です。
そして、その2年間でデューデリジェンスと、社長の引き継ぎを行うのです。従業員や取引先、銀行との関係性の構築、マネジメントの課題の洗い出し、それらの可視化を行います。

 実際に、一緒に働くことで、外から見てわからなかったことが判明せることもあるだろう。現社長から顔を繋いでいただいて、従業員、取引先、銀行と関係を築くのは、ベターな方法であろう。

 これと同時に、デューデリジェンスについて、著者は次のように述べている。

この際の約束事として、会社の会計を見ている顧問税理士、顧問弁護士を自分が指名する人に代えてもらえば、より効果的です。社長と長年の付き合いがある顧問は、社長と運命共同体で顧間を務めてきていますから、社長が隠していること(ブラックボックス)を表には出しません
し、社長自体が把握していない財務や法務の問題があったりもします。
 そして、新しい顧問税理士は、デューデリジェンスが専門で公認会計士のライセンスを持っている人にしましょう。弁護士も、デューデリジェンスを得意とする大手法律事務所から独立したような方が値段もリーズナブルでいいでしょう。
 こうすれば、数百万円の持ち出しをすることなく、会社の必要経費としてデューデリジェンスを行うことができます。相手の社長の側も、会社を売ることを前提に考えているわけですから、新しい顧問を拒否する理由はありません。

 「なるほど、確かにこれであれば自分にも出来そう。」と考えるあなたは、思慮が足りない。実際問題、ここまでの関係を築くのが大変だし、それができれば苦労しないだろう。そして、これくらいの事をしてもなお、上手くいかないこともある。

 やはり、金曜の夜、いつもと同じ顔ぶれの同僚と安酒を呑んでいるサラリーマンでいるのがいいのかもしれない(笑)