【感想】采配 落合博満

【書評】決断=実行 落合博満 - 鳥木ケンのブログ 〜金融系が多め

【書評(続き)】決断=実行 落合博満 - 鳥木ケンのブログ 〜金融系が多め

 上記のリンクは、以前、元プロ野球選手であり中日ドラゴンズの監督も努めた落合博満氏の書籍から、ビジネスパーソンに有益な情報について、同書を引用して感想をかいた。

 同じく、ビジネスパーソン向けに書かれた書籍、「采配」について、気になった箇所をピックアップしたい。

 【シンプルな指導について

 私は他人に何かを伝える、教える時には、なるべくシンプルに伝えるようにしている。そうでないと、受け手側が初めて聞く情報の場合、脳の短期記憶領域がオーバーシュートしてしまうからだ。

 落合氏も同様な理由からシンプルに心がけているのと思ったが、少し様相が異なっていた。これを知って、だから何?と問われれば、何も無いとしか答えようがない。ただただ、個人的に気になっただけではあるが。

私が伝えたことを選手はどうとらえたのか、私が知ることはできない。ここがコミュニケーションの最大の難しさではないだろうか。

 自分以外のスタッフをマネージした時、誰もが感じるであろう、コミュニケーションの難しさ。自分が意図した事とは、全く異なる結果やアウトプットが出された時の脱力感たるやいなや。誰もが経験したことあるでしょ?

 この誰もが経験したことがある、コミュニケーションギャップから、落合氏は次のような指導方法を心がけるようになっている。

現役引退後は難しい打撃技術をシンプルに伝える方法を考えてきた。小学生でも理解でき、納得してもらえる表現、言葉遣い、伝達方法などである。ところが、ここにひとつの弊害が生まれた。シンプルに伝えようとすると、相手の耳に入りにくいということだ。私に打撃指導を受けようとする選手は、自分の知らないことを教えてくれるのだろうと期待している。しかし、私がシンプルな表現を使うと「この人は、誰でも知っているような簡単なことしか言わないな」を感じるようだ。

 シンプルに、簡潔に要点を伝えると、たまにこのように自分のことをバカにしていると反発する輩はいる。例とすれば、大学受験を控える高校生とかで、基礎問題を解けないのに、応用問題ばかりに傾注する受験生とか。残念ながら、聞く耳を持たない人間を、そこから能力を上達させるのは難しい。

最近、テレビのニュースを見ても理解しがたい経済や政治の話題を、わかりやすく解説してくれるが行っている。その番組の出演者たちは、難しいと感じていた話題を小学生にも理解できそうなシンプルな表現で解説されると、「何だ、そんな簡単なことだったのか」と笑顔で膝を打つ。自分の場門外の分野については、シンプルに伝えてもらうほど頭に入りやすいのである。それなのに、自分の専門分野。すなわちプロ野球選手にとっての野球に関しては、シンプルに説明してくれる人よりも、難しい表現を使う人のほうが高度な内容を伝えてくれていると感じるようだ 。(中略)ただ、シンプルな表現は、受け手に勘違いさせ場合が少なく、大切な要素を凝縮しているものなのだ。高い技術を持っている人ほど、その難しさを熟知しているからこそ、第三者に伝える際にはシンプルな表現を使おうとする。

 シンプルに、簡潔に伝えるのは、相手の、受けて側へ、伝えたい意図を凝縮している。

 

 【引き継ぎはしない

 組織に属している時、業務の引き継ぎはなかなかの重労働であることは、多くのビジネスパーソンて異論はないであろう。「It's not my job.」と言われ、幾度と引き継ぎを断られたことか。

 あくまでも野球の監督の業務についてだが、落合氏は引き継ぎを一切行わないと断言している。

プロ野球界は特殊だと言われることがある。だが、実はビジネス、政治など多く
の世界でも、リーダーにとって大切なのは、仕事を引き継いでいくことよりも自分自身の方法論を部下に明確に示すことではないだろうか。企業であれば、理念や慣習といったものは「引き継ぐ」というよりも「受け継がれ」ていく。そして、リーダーが交代するタイミングというのは、組織の若返りを図ろうとしていたり、新しい風を吹き込もうとしている場合が多い。その際にリーダーが明らかにすべきなのは、自分がリーダーになっ
た組織は何を目指し、そこまでどういうプロセスで到達しようと考えているか、ということなのだ。

 引き継ぎで自分が意識したのは、社内システム等、管理が属人的に陥り的な業務であったが、落合氏のそれとは位相が異なっていた。あくまでも、マネジメントとしての彼の指南についてだ。

チームを預かる立場になって強く感じてきたのは、買った負けたという結果よりも、大切なのは選手たちを迷子にしないということなのだということだ。私が「日本一になる」とだけ宣言し、その方法論を選手たちに示してやらなければ、選手たちは何をすればいいのかわからなくなり、チームは迷走してしまうだろう。だからこそ、厳しい練習を課し、「これだけ練習すれば、負けるわけがない」と実感させることで選手を一人二人と一本立ちさせ、次に誰が監督になっても優勝を目指して戦えるチーム、欲をいえば常に優勝を争えるチームに成熟させておく。後任に引き継ぎはしないが、次の監督が困らないチームにしておくこと。それが監督としてやらなければならない仕事なのだと理解してきた。

 これができれば最良、最高であるが、いかに迷子になる組織が多いことか。

采配

采配

 
決断=実行

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